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日本の相続税 完全ガイド ― 外国人・海外在住の相続人のために

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日本に資産をお持ちの方、日本に住む外国人の方、あるいは日本に縁のある親族から相続を受ける見込みのある方。そうした方が「相続対策」について知っているつもりのことを、根本からひっくり返す事実が一つあります。

日本は「遺産」ではなく「相続人」に課税します。

米国や英国の制度しか知らないと見落としがちなこの違いが、「誰が申告するか」「誰がいくら払うか」を大きく変えます。本記事では、国際的な顧客にFP(ファイナンシャルプランナー)が説明するつもりで、日本の相続税(相続税)を、平易な言葉と国税庁の一次情報に基づいて整理します。外国人・海外在住の相続人が実際に直面する場面に絞って解説していきます。

本記事は一般的な情報提供であり、個別のアドバイスではありません。 税制は改正されますし、状況は人それぞれです。数値は2026年時点のもので、国税庁(NTA)の情報に基づいています。実行前には必ず税理士にご確認ください。

大前提:「遺産」課税ではなく「相続人」課税

米国では、財産が相続人に渡る前に「遺産」が連邦遺産税を負担します。日本はこれが逆です。課税される金額は遺産全体で計算しますが、納税義務は各相続人に、受け取った財産に応じて発生します

この違いがもたらす実務上の影響は小さくありません。

以降のすべては、この前提から導かれます。

ステップ1 ― そもそも課税対象か(納税義務者の区分)

全世界財産が課税されるのか、日本国内財産だけなのかは、居住地と国籍の組み合わせで決まります。多くの国際的な読者にとって重要な点に絞ると、次のとおりです。

区分課税対象
無制限納税義務者(居住者、または一定の非居住者)全世界財産 ― 日本国内・海外の両方
制限納税義務者日本国内財産のみ(日本の不動産・預金・証券口座など)

外国人のケースで効いてくるのは主に次の2つのルールです。

  1. 10年間の住所ルール。 海外在住でも、日本国籍の相続人は、死亡前10年以内のいずれかの時点で日本に住所があれば、全世界財産が課税対象になります。日本を離れても全世界課税が即座に消えるわけではありません。
  2. 「一時居住者」の緩和(2021年改正)。 出入国管理法の別表第一の在留資格(就労・留学など)を持ち、過去15年のうち日本居住が10年以下の外国人は「一時居住者」として、日本国内財産のみが課税対象になります。被相続人・相続人ともにこの別表第一の外国人であれば、海外財産は課税範囲から完全に外れます。出向で来日した駐在員とその家族にとって重要な緩和です。

詳細な区分は法令で定められているため、ご自身の区分は必ず確認してください。海外在住の相続人向けの国税庁の解説は No.4138、贈与側は No.4432 です。

ステップ2 ― 基礎控除(いくらまで非課税か)

日本の非課税枠は、定額ではなく計算式です。

基礎控除 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

配偶者と子2人、つまり相続人3人なら 4,800万円 が控除されます。課税対象の遺産総額が基礎控除以下なら、原則として相続税はかからず、申告も不要です(出典:国税庁 No.4152)。

ここでも相続人課税の論理が表れています。法定相続人が多いほど非課税枠が増えるのです。法定相続人は民法に基づき、常に相続人となる配偶者に加えて、①子 → ②直系尊属(親・祖父母)→ ③兄弟姉妹の順で決まります(国税庁 No.4132)。

ステップ3 ― 税率と実際の計算手順

日本の税率は 10%から55% の累進です。ただし、ある相続人の取得額にそのまま税率を当てはめるわけではありません。国税庁の方法は次のとおりです。

  1. 遺産総額から基礎控除を引く。
  2. 残りを各相続人の法定相続分で按分する。
  3. 按分後の各額に税率を当てはめる。
  4. それらを合計して「相続税の総額」を出す。
  5. その総額を、実際に取得した割合で各相続人へ配分する。

法定相続分ごとの速算表(国税庁 No.4155):

法定相続分(各相続人)税率控除額
1,000万円 以下10%0
3,000万円 以下15%50万円
5,000万円 以下20%200万円
1億円 以下30%700万円
2億円 以下40%1,700万円
3億円 以下45%2,700万円
6億円 以下50%4,200万円
6億円 超55%7,200万円

計算例

課税対象の遺産が 2億円、相続人は配偶者と成人の子2人とします。

ただし実際には、納付の前に配偶者の税額軽減が結果を大きく変えるのが通常です。

ステップ4 ― 配偶者の税額軽減(多くの場合で決定的)

配偶者は、(a) 1億6,000万円 と (b) 配偶者の法定相続分相当額 のいずれか多い額 までは相続税がかかりません(国税庁 No.4158)。先の例では配偶者の7,600万円は1億6,000万円を大きく下回るため、配偶者分の税額はゼロになります。ただし、この軽減を受けるには申告が必要です。

ここでよくあるジレンマがあります。配偶者にすべてを寄せれば「いま」の税は最小化できますが、「二次相続」(配偶者の死亡時、軽減がなく財産が子へ渡る)で税が膨らむことがあります。国際的な家族は、一次・二次の両方をまとめて試算すべきです。

ステップ5 ― 贈与税と2024年改正

日本の生前贈与には、互いに排他的な2つの方式があり、2024年に大きく変わりました

方式1 ― 暦年課税。 受贈者は1暦年あたり 110万円 までは非課税で、超過分は10〜55%で課税されます(国税庁 No.4408)。2024年改正で、相続財産への加算期間が3年から7年に延長されました。死亡前7年以内の贈与が遺産に持ち戻されます(延長された4〜7年目分には合計100万円の控除あり)。完全な7年化は2031年以降の相続から段階的に適用されます(国税庁 改正 PDF)。

方式2 ― 相続時精算課税。 60歳以上の贈与者から18歳以上の直系卑属への贈与で選択でき、2,500万円の特別控除(超過分は一律20%)があります。2024年改正で、これとは別に年110万円の基礎控除が新設され、しかもこの年110万円分は死亡時に遺産へ持ち戻されません(国税庁 No.4103)。毎年こつこつ移転したい家族にとって、方式2の魅力が増しました。

ステップ6 ― 国際課税:二重課税を避ける

最悪なのは、同じ資産に二重で課税されることです。これを和らげる仕組みが2つあります。

財産の所在地ルール・居住地・控除の相互作用こそ、高くつくミスが起きる場所です。自己流が本当に危険な唯一の領域なので、国際税務の専門家に依頼してください。

ステップ7 ― 期限と「デジタル資産」の盲点

申告と納付の期限は、死亡を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)。海外在住の相続人にとっては、日本の書類集め、戸籍の収集、海外からの納付手配だけで、この期間はあっという間に過ぎてしまいます。

そして、FPとセキュリティのちょうど境界に潜む現代的な落とし穴が デジタル資産 です。日本の暗号資産、ネット証券の残高、ポイントやマイルまでもが課税対象の遺産ですが、相続人がそれらを「見つけられない・アクセスできない」ことが頻発します。鍵は保有者とともに失われ、二段階認証が家族を締め出し、取引所は相続人の持っていない書類を求めます。デジタル資産の保護と棚卸しはそれ自体が相続対策であり、私たちはセキュリティメディアでその防御側を扱っています。暗号化した「デジタル遺産の目録」を作っておくことは、国境をまたぐ家族にとって最も費用対効果の高い一手の一つです。

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参考情報

2026-06-29 に国税庁の情報と照合済み。

よくある質問

日本の相続税は遺産と相続人のどちらに課税されますか?

日本は相続人が受け取った財産に課税します。遺産そのものに課税する米国とは逆です。まず遺産全体に対し、各相続人の法定相続分で税額を計算してから、実際に取得した割合に応じて各相続人へ配分します。

海外在住で日本国籍でない場合、日本の相続税はかかりますか?

あなたと被相続人の区分によります。制限納税義務者は日本国内財産(日本の不動産や預金など)のみが課税対象です。全世界財産が課税されるのは、たとえば過去10年以内に日本に住所があった日本国籍の相続人など、無制限納税義務者に当たる場合です。

日本では非課税で渡せる金額はいくらですか?

基礎控除は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。配偶者と子2人(相続人3人)なら4,800万円までは相続税がかかりません。

日本の相続税の申告期限はいつですか?

申告と納付は、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。配偶者の税額軽減など一部の特例は、税額がゼロになる場合でも申告が必要です。

日本と母国との二重課税は避けられますか?

可能な場合があります。日本と米国には相続税・贈与税に関する条約(1954年)があり、課税権の配分と税額控除を定めています。外国税額控除や条約の適用は事案ごとに大きく異なるため、国際税務の専門家にご確認ください。

著者について

TCL ファイナンシャル・プランニング編集部

日本の法制度・公的統計・相続/贈与の実務を、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点で世界に向けて解説する編集チーム。一次情報(国税庁・厚生労働省・e-Stat 等)に基づく。

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