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非居住者の日本相続税:無制限納税義務者・制限納税義務者と10年ルールを徹底解説

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日本に関係する相続が発生したとき、「税額はいくらか」よりも先に答えるべき問いがあります。

「何に対して課税されるのか」

日本の相続税は、相続人を次の2つに区分します。

この区分の違いは、課税額に甚大な影響を与えます。日本の実家(評価額5,000万円)と海外の投資口座(評価額2億円)を相続するケースを考えると、無制限納税義務者なら合計2億5,000万円に課税される一方、制限納税義務者なら5,000万円だけが課税対象です。

本記事では、住所(生活の本拠)の判定、10年ルール、一時居住外国人の特例を国税庁の根拠とともに解説します。

この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではありません。 税制は改正されることがあります。ご自身の状況については、日本の税理士・国際税務の専門家にご確認ください。

基本概念:住所(生活の本拠)

日本の相続税は、「市区町村への住民登録の有無」ではなく、**「生活の本拠(住所)がどこにあるか」**という事実関係で納税義務者区分を決定します(民法第22条と同一の住所概念)。

住所の判定では次のような事実が考慮されます。

住民票を抜いただけでは、生活実態が変わらなければ日本に住所があると認定されることがあります。逆に、外国籍の方が日本に一時的に滞在している場合でも、生活の本拠が海外にあると認められれば日本に住所はないと判定されます。

納税義務者の区分(法的フレームワーク)

相続税法第1条の3・第1条の4に基づく区分を、国際的な読者が関わる主なケースに絞って整理します。

相続人の状況区分
相続開始時に日本に住所あり無制限納税義務者(全世界財産が課税対象)
日本に住所なし・日本国籍・過去10年以内に日本に住所あり無制限納税義務者(全世界財産が課税対象)
日本に住所なし・日本国籍・過去10年間日本に住所なし制限納税義務者(国内財産のみ課税)
日本に住所なし・外国籍・一時居住外国人に非該当制限納税義務者(国内財産のみ課税)
日本に住所あり・外国籍・一時居住外国人に該当制限納税義務者(国内財産のみ課税)

海外在住の外国籍の方は、原則として制限納税義務者です。

国税庁の根拠:相続税の納税義務者について(質疑応答事例)

10年ルール:日本国籍の方の注意点

海外移住した日本国籍の方に最も影響する規定が「10年ルール」です。

日本国籍を持つ方が海外に転出しても、日本の住所を離れてから10年間は無制限納税義務者として扱われます。この期間は、海外の財産も含む全世界の財産が相続税の課税対象になります。

ルール変遷の歴史

時期ルックバック期間
2013年以前5年
2013年改正10年に延長
2017年改正被相続人への適用も明確化

2013年の改正は、日本国籍者が海外移住することで相続税を回避する手法に対応するために実施されました。10年に延長されたことで、短期の移住による節税は実質的に機能しなくなっています。

具体例

2020年1月に日本の住民票を抜いてアメリカに完全移住した日本国籍の方(住所の移転も実態として成立しているケース)が、2027年12月に日本に住む親から相続を受けた場合——離日から7年なので、まだ10年ルールの期間内です。この方は無制限納税義務者として扱われ、アメリカの自宅や米国の証券口座も含む全世界財産が計算に使われます(相続税は取得した財産に対してかかります)。

2030年1月以降に同じ相続が発生すれば、10年ルールの期間が経過し、制限納税義務者として日本国内の財産のみが課税対象となります。

二重国籍の方

日本国籍を有する二重国籍の方は、日本国籍を持つ者として扱われます。

外国籍の方:制限納税義務者が原則

日本に住所を持たない外国籍の方は、原則として制限納税義務者です。日本に在住していた期間がいくら長くても、現在住所がなければ制限納税義務者です。

例えば、日本で20年間働いた後に帰国したアメリカ国籍の方が日本の不動産を相続した場合、日本国内の不動産のみが課税対象です。アメリカの財産は対象外となります。

一時居住外国人の特例(2021年改正)

2021年の改正で、日本に住所を持つ外国籍の方が一定の要件を満たす場合に制限納税義務者とする特例が創設されました。

要件は次のとおりです。

  1. 入管法の別表第一(就労・留学・日本人の配偶者等)に定める在留資格で日本に在住している
  2. 相続開始前15年以内に日本に住所を有していた期間の合計が10年以下である

この2つを満たす方は「一時居住外国人(いちじきょじゅうがいこくじん)」として制限納税義務者に分類されます。日本に住んでいても、海外の財産は課税対象外です。

この特例は、企業の海外駐在員や留学生など、一時的に日本に滞在している外国籍の方を対象としています。被相続人(亡くなった方)も一時居住外国人に該当する場合、被相続人の国外財産も課税対象外になるという規定もあります。

国税庁の根拠:相続税の納税義務者について
一時居住外国人の詳細は、2021年改正の専門記事で解説しています。

「国内財産」の範囲

制限納税義務者の場合、「国内財産(こくないざいさん)」のみが課税対象です。相続税法および施行令に基づく財産の所在判定(所在地国)は次のとおりです。

財産の種類国内財産となる条件
不動産日本国内に所在
預貯金日本国内の金融機関(支店が基準)
株式・出資発行法人が日本法人
公社債発行者が日本法人、または名義書換機関が日本国内
貸付金債務者の住所が日本国内、または担保物が日本国内に所在
動産日本国内に所在
生命保険金日本国内の保険会社が支払う
退職手当金日本国内の雇用主が支払う
知的財産権日本で登録されている

注意点として、日本の銀行の海外支店に預けている預金は国外財産として扱われます(支店が海外にあるため)。一方、外国銀行の東京支店の預金は国内財産です(支店が日本国内にあるため)。

国税庁の根拠:相続財産の範囲(No.4152)

被相続人の住所も影響する

相続人の区分は「何が課税対象か」を決めますが、「被相続人が何を持っていたか」は別の問題です。

被相続人が相続開始時に日本に住所を持っていた場合、被相続人の全世界財産が相続税の課税対象となる財産に含まれます。制限納税義務者の相続人(例:ニューヨーク在住のアメリカ国籍)であっても、被相続人が日本に住所を持っていれば、日本にある財産についての相続税申告が必要になります。

つまり、「被相続人の住所はどこか」という問いも、「相続人の区分はどこか」と同様に重要です。

代表的なケース別整理

ケースA:オーストラリア在住の日本国籍者、日本の親から相続
離日から10年未満の場合:無制限納税義務者。オーストラリアの財産も計算に含まれます。10年超の場合:制限納税義務者(日本国内財産のみ)。

ケースB:就労ビザで日本在住のイギリス国籍者、イギリスの親から相続
一時居住外国人の要件(別表第一ビザ、過去15年のうち日本在住10年以下)を満たせば制限納税義務者。イギリスの財産は課税対象外になります。

ケースC:日本に住んだことがないアメリカ国籍者、東京のマンションを相続
制限納税義務者。東京のマンションにのみ相続税がかかります。アメリカの財産は関係ありません。

ケースD:離日12年が経過した日本国籍者、日本の親から相続
制限納税義務者(10年ルールの期間が経過)。相続した日本国内の財産(不動産・預金など)のみが課税対象です。

次のステップ


参考情報

よくある質問

無制限納税義務者と制限納税義務者は何が違うのですか?

無制限納税義務者は世界中すべての財産に日本の相続税が課税されます。制限納税義務者は日本国内にある財産(日本の不動産・日本の金融機関の預金など)にのみ課税されます。どちらになるかは主に住所(生活の本拠)と国籍で決まります。

5年前に日本を離れた日本国籍の方は海外財産にも課税されますか?

はい。10年ルールにより、日本国籍を持つ方は日本の住所を離れてから10年間は無制限納税義務者として扱われます。海外に移住してから10年が経過するまでは、海外財産も含む全世界の財産が課税対象になります。

日本に住んだことがない外国籍の方でも日本の相続税はかかりますか?

日本に住所がない外国籍の方は原則として制限納税義務者です。日本国内にある財産(日本の不動産など)については相続税がかかりますが、海外財産は課税対象外です。

「国内財産」にはどのような財産が含まれますか?

日本に所在する不動産、日本の金融機関に預けている預貯金、日本法人の株式、日本国内にある動産などが含まれます。生命保険金(日本の保険会社が支払うもの)や退職手当金(日本の雇用主が支払うもの)も国内財産として扱われます。

「一時居住外国人」の特例とはどのような制度ですか?

外国籍で入管法の別表第一に定める在留資格(就労・留学など)で日本に在住し、過去15年のうち日本に住所を有していた期間が10年以下の方は「一時居住外国人」として制限納税義務者に分類されます。この特例により、日本に住んでいても海外財産には課税されません。

著者について

TCL ファイナンシャル・プランニング編集部

日本の法制度・公的統計・相続/贈与の実務を、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点で世界に向けて解説する編集チーム。一次情報(国税庁・厚生労働省・e-Stat 等)に基づく。

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