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日米相続税条約と外国税額控除 ― 日米間の相続で二重課税を避ける仕組み

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米国籍の相続人がいる、あるいは米国内に不動産や証券口座などの資産を持つ被相続人がいる――こうした日米をまたぐ相続では、日本の相続税と米国の連邦遺産税の両方が視野に入ってきます。両国の制度は独立して動いているため、何も対策をしなければ同じ財産に両方の税がかかる「二重課税」のリスクが生じます。この記事では、両国の課税の仕組みと、二重課税を避けるための日米相続税条約・外国税額控除の使い方を整理します。

本記事は一般的な情報提供であり、個別のアドバイスではありません。 国際相続は税法だけでなく条約解釈や各国の申告実務が絡み合う複雑な領域です。数値は2026年時点のもので、日本の国税庁(NTA)および米国の内国歳入庁(IRS)の情報に基づいています。実行前には日米両国の税務専門家にご確認ください。

なぜ二重課税が起こり得るのか

日本の相続税は、相続人・被相続人の居住地や国籍によって、課税対象が「全世界財産」になるか「日本国内財産のみ」になるかが変わります(この居住形態のルールは日本の相続税 非居住者ガイドで詳しく解説しています)。

一方、米国の連邦遺産税(Federal Estate Tax)は、被相続人が米国市民または米国居住者(ドミサイル)であれば、全世界財産が課税対象になります。2026年時点で、米国市民・米国居住者の遺産税の基礎控除(unified credit相当額)は1,500万ドル(配偶者間の移転を活用すれば夫婦で3,000万ドル)まで引き上げられており(IRS、いわゆるOne Big Beautiful Bill Act による恒久化後の水準)、多くの家庭にとって連邦遺産税自体は問題にならない水準です。

問題になりやすいのは、被相続人が**米国市民・米国居住者ではない「非居住外国人(nonresident alien)」であるにもかかわらず、米国内に所在する資産(不動産、米国法人株式など。いわゆる「situs資産」)を保有していたケースです。非居住外国人の米国遺産税の基礎控除は、市民・居住者に比べてはるかに小さく、原則としてわずか6万ドル相当(ユニファイドクレジット1万3,000ドル分)**しかありません(IRS)。日本に居住する日本人が米国不動産や米国株を保有していた場合、この非居住外国人向けの低い控除枠がそのまま適用されると、米国側で予想外に大きな遺産税が発生しかねません。

日米相続税条約による救済

この非居住外国人への不利な扱いを緩和するのが、1954年に発効した日米相続税条約(正式名称:遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約)です。

条約の重要な効果の一つは、日本に居住する被相続人が米国内資産(situs資産)を保有していた場合、米国側の遺産税の基礎控除を、通常の非居住外国人向けの6万ドルではなく、「米国内資産の価額 ÷ 全世界財産の価額」の割合に応じて按分した控除額(つまり市民・居住者と同じ基礎控除を按分したもの)とする仕組みです。全世界財産のうち米国内資産の占める割合が小さければ小さいほど、按分された控除額は市民並みの基礎控除に近づき、非居住外国人の原則的な扱いよりも有利になります。

条約が適用されるかどうか、按分計算の実務的な扱いは個別の資産構成によって変わるため、米国側の遺産税申告(Form 706-NA等)を担当する米国税務専門家との連携が欠かせません。

日本側の二重課税排除 ― 外国税額控除

条約が米国側の課税を調整する一方で、日本側にも独自の二重課税排除の仕組みがあります。それが外国税額控除です。

同一の相続財産について、外国(米国を含む)で日本の相続税に相当する税(米国の連邦遺産税や州の遺産税・相続税など)が課された場合、その財産を相続した人は、日本の相続税額の計算において、一定の算式で計算した金額を上限として、外国で課された税額を差し引くことができます。この計算は相続税申告書の**第8表「外国税額控除額の計算書」**で行い、算出した控除額を申告書第1表の外国税額控除欄に転記します(国税庁 外国税額控除の適用を受けられる方へ)。

外国税額控除の考え方をシンプルに言えば、「同じ財産について外国で払った税金の分だけ、日本の相続税を安くする」という仕組みです。ただし、控除できる金額には上限(その財産に対応する日本の相続税相当額)があるため、外国の税率が日本より高いケースでは、外国で払った税額の全額が控除しきれず、結果として実質的な負担が残ることもあります。

実務上のポイント

日米にまたがる相続に直面した場合、次の点を意識しておくと手続きがスムーズになります。

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参考情報

2026-07-19 に国税庁・IRSの情報と照合済み。

よくある質問

日米間の相続で、日本と米国の両方から相続税がかかることはありますか?

理論上はあり得ます。日本は相続人の居住地・国籍等に応じて全世界財産または国内財産に相続税を課し、米国は被相続人が米国市民・米国居住者であれば全世界財産に連邦遺産税を課すか、非居住外国人であっても米国内資産(situs資産)に課税します。同じ資産に日米両方の税が及ぶ場合、二重課税排除の仕組みが必要になります。

二重課税を避けるための日米間の条約はありますか?

あります。正式名称は「遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」で、1954年に発効しました。この条約は、日本国籍者・日本居住者が米国内資産を保有していた場合の米国側の遺産税の扱いなどについて定めています。

米国の遺産税は非居住外国人にどう適用されますか?

米国市民・米国居住者でない「非居住外国人(nonresident alien)」は、原則として米国内に所在する資産(situs資産)についてのみ米国遺産税の対象になり、基礎控除(unified credit相当)はわずか6万ドル分と、米国市民・居住者の控除額に比べて大幅に小さくなります。ただし日米相続税条約により、日本の居住者は世界財産に対する米国内資産の割合に応じた按分控除を受けられます。

日本の相続税を計算する際、米国で払った税金は考慮されますか?

考慮される仕組みがあります。日本の相続税には外国税額控除という制度があり、同一の財産について外国(米国を含む)で相続税に相当する税を課された場合、その税額を一定の範囲で日本の相続税額から差し引くことができます。相続税申告書の第8表で計算します。

著者について

TCL ファイナンシャル・プランニング編集部

日本の法制度・公的統計・相続/贈与の実務を、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点で世界に向けて解説する編集チーム。一次情報(国税庁・厚生労働省・e-Stat 等)に基づく。

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